小説みたいなことは起こらない

小説みたいなことは起こらない

井上荒野

大雪の日、小説家だった80歳の茉莉子と33歳で彼女の元担当編集だった健太が住む古家に、見知らぬ男が訪ねて来た。全身黒ずくめの男は電話を貸してほしいと言う。いわく、近くに住む知人のもとに行こうとしたのだが進めず、その知人に迎えにきてもらうのだと。男のことを不審がる健太とは異なり、茉莉子は男にその昔二人は愛人でもあったと明け透けに語る。警報級の雪が、停電が、思いがけない訪問客が、二人の無風な心身と日常を予想外のものに変えていく…。

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